日本国憲法第25条
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。 |
世界保健機関(WHO)憲章
健康とは、肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない。 |
ウィンスローの公衆衛生の定義
公衆衛生とは、環境衛生の改善、伝染病の予防、個人衛生を原則とした個人の教育、疾病の早期診断と治療のための医療と看護サービスの組織化,及び地域社会のすべての人に、健康保持のための適切な生活水準を保障する社会制度の発展のために、共同社会の組織的な努力を通して疾病を予防し、寿命を延長し、肉体的、精神的健康と能率の増進を図る科学であり、技術である。 |
行政組織と所管官庁
厚生労働省 | 水道法、地域保健法、健康増進法、労働安全衛生法、労働基準法、興行場法、旅館業法、公衆浴場 |
総務省 | 消防法 |
文部科学省 | 学校保健安全法 |
環境省 | 大気汚染防止法 |
水質汚濁防止法 | |
廃棄物処理法、土壌汚染対策法 | |
国土交通省 | 建築基準法 |
浄化槽法 | |
水道法(品質・衛生以外)、下水道法 | |
環境省・国土交通省 | 下水道の終末処理場の維持管理 |
地域保健法
・地域保健法には、対人保健だけでなく建築物衛生に関わる事項も含まれる
・保健所の設置主体
- 都道府県 - 指定都市 - 特別区
・都道府県設置の保健所が全国で最も多い
・市町村は「市町村保健センター」を設置できる
・都道府県の保健所は、市町村に対して技術的助言を行える
・保健所長は原則として医師
・厚生労働大臣は、地域保健対策に関する基本指針を定めなければならない
・保健所には「環境衛生指導員」は配置されていない ←ひっかけ注意!
保健所の主業務
地域保健 | 思想の普及・向上 |
統計 | 人口動態統計 |
食品 | 食品衛生 |
環境衛生 | 水道・廃棄物処理など |
医療 | 医事・薬事 |
保健 | 母性・乳幼児・老人の保健 |
精神 | 精神保健 |
保健所と関係ないぞ
×国民健康保険 | 市町村・保険者の管轄 |
×介護認定の査定 | 市町村が実施 |
×労働災害の統計・報告 | 労働基準監督署の所管 |
×特定健康診査の実施 | 健康保険組合などが実施主体 |
×保健所に労働基準監督官がいる | 実際は労働基準監督署に配置される |
×保健所はすべての市町村に設置 | 設置主体は都道府県・指定都市・特別区のみ |
関連行政事務
・学校保健に関する地方行政事務は、私立学校を除き教育委員会が責任を負う
・労働衛生専門官は労働基準監督署に置かれる(保健所ではない)
・地方の労働衛生行政は保健所が担当
建築物における衛生環境の確保
・多数の人が利用する建築物の環境衛生を維持し、公衆衛生の向上を目的とする。
・保健所は、建築物の環境衛生に関する知識の普及や相談、指導を行う。
・不特定多数が利用する建築物は、一定の要件を満たすと特定建築物に該当する。
・特定建築物の監督官庁は、都道府県知事、保健所を設置する市の市長、または特別区の区長。
・特定建築物所有者等は、建築物環境衛生管理基準に従った維持管理が義務付けられる
↑建築物環境衛生管理技術者ではない!
・特定建築物以外でも、多数の者が利用する建築物は、基準に従い維持管理に努めなければならない
・特定建築物の所有者等は、建築物環境衛生管理技術者を選任しなければならない
・所有者以外にも、建築物の全部の管理について権限を持つ者も含まれる。
・環境衛生上良好な環境を目標とする基準 ←最低許容限度の基準ではない!
・衛生管理の監督官庁は、都道府県知事、保健所を設置する市の市長、特別区の区長
・公衆衛生の向上及び増進を目的とする
特定建築物
(1) 特定建築物の定義
法的根拠 | 建築物衛生法(ビル管法) |
延べ面積の基準 | 3,000㎡以上(学校は8,000㎡以上) |
維持管理の義務 | 建築物環境衛生管理基準に基づく維持管理が必要 |
(2) 特定建築物に該当する用途
該当する用途 | 該当しない用途 |
興行場(映画館・劇場など) | 病院 |
百貨店、旅館、図書館、博物館、美術館 | 自然科学系研究所 |
集会所(公民館、結婚式場) | 共同住宅、寄宿舎 |
遊技場(ボーリング、ダンスホール) | 工場 |
店舗(美容室、銀行) | 寺院 |
事務所(人文科学研究所) | ジム、体育館 |
専修学校(専門学校)、各種学校(学習塾、自動車学校) | 保育施設 |
企業の研究所 | 駅舎 |
特定建築物の環境衛生管理に関する基礎知識
1. 特定建築物の延べ面積の算出
計算に含まれる部分
・廊下・階段・トイレ・機械室等の不随する部分
・倉庫・映画館ロビー・駐車場の付属する部分
計算に含まれない部分
・認可保育園、福祉施設(老人デイサービスセンター)
・公共駐車場、独立棟の駐車場、貸倉庫、地下道、診療所
・地下の変電所、製品試験研究所、鉄道のホーム
「学校薬剤師」と「学校医」の役割
区分 | 主な職務 | 特徴 |
学校 薬剤師 | ・環境衛生検査(空気など)・学校安全・保健計画の立案参与 ・環境衛生の指導助言 | 検査系が中心 |
学校医 | ・健康診断、予防処置・学校安全・保健計画の立案参与 ・環境衛生の指導助言 | 健康診断が中心 |
覚え方のコツ!: 検査系 → 学校薬剤師、健康診断 → 学校医!
学校環境衛生基準の検査項目
・換気
・温度
・照度
・騒音レベル
・水質(飲料水・プール)
・ネズミ・害虫の生息状況
・学校の清潔
・備品の管理
・施設・設備の衛生状態
試験に出る!検査項目対象外
×振動レベル |
×土壌汚染 |
×運動場のPM2.5濃度 |
×落下細菌 |
×光化学オキシダント |
届出事項
・名称・所在地・用途
・特定用途に供される部分の延べ面積
・構造設備の概要
・使用開始年月日(※竣工日・確認済日は不要)
・所有者の氏名・住所
・維持管理権原者の氏名・住所
・建築物環境衛生管理技術者の氏名・住所・免状番号
・建築確認済証の写しは不要
届出の提出先・義務者
提出先 | 建物の所在地を所管する都道府県知事(保健所設置市・特別区は市長・区長) |
義務者 | 所有者または全体の管理権原を有する者 |
共有者 | 各人がそれぞれ提出義務あり |
届出期限
ケース | 届出期限 |
新たに完成した場合 | 1ヵ月以内 |
増築で特定建築物になった場合 | 1ヵ月以内 |
届出事項に変更があった場合 | 3ヵ月以内 |
特定建築物に該当しなくなった場合 | 届出不要 |
試験に出る!届出不要
国や地方公共団体の建物 |
建築確認済証の写し |
技術者免状の原本 |
市区町村長の同意書 |
罰則・制裁措置
内容 | 罰則 |
届出未提出・虚偽届出 | 30万円以下の罰金 |
長期間未届出 | 使用停止命令の可能性あり |
帳簿・図面の保存期間
書類 | 保存年数 |
貯水槽の清掃・修理記録 | 5年 |
設備の系統図面 | 5年 |
消防設備点検記録 | 建物に備え付け必要 |
①特定建築物の所有者等の義務
・建築物環境衛生管理基準に従った維持管理が義務付けられる
・特定建築物以外でも、多数の者が利用する建築物は、基準に従い維持管理に努めなければならない
②建築物環境衛生管理技術者の選任義務
・特定建築物の所有者等は、建築物環境衛生管理技術者を選任しなければならない
・所有者以外にも、建築物の全部の管理について権限を持つ者も含まれる
③建築物環境衛生管理基準のポイント
・最低許容基準ではなく、良好な環境を目標とする基準
▶︎「健康の維持・向上」という積極的な目標に向けた指針だから。「健康になるための目安」であり、「これだけ守ればいい」という最低ラインではない。
・衛生管理の監督官庁は、都道府県知事、保健所を設置する市の市長、特別区の区長
・公衆衛生の向上及び増進を目的とする
④試験でよく出る間違いポイント
× 建築基準法と混同しやすい
× 設備・構造の最低基準を定めている → ✕(定めていない)
× 設備の設計指針を定めている → ✕(定めていない)
建築物環境衛生管理技術者の職務と免状
技術者の職務・立場
選任義務 | 所有者等にあり |
主な職務 | 測定・検査結果の評価、管理業務指揮・監督、改善意見の表明 |
命令権 | 設備改善命令は不可(意見表明まで) |
常駐義務 | なし |
雇用関係 | 直接雇用でなくても可(委任関係でOK) |
複数建物の兼任 | 不可(1建物のみ) |
営業所監督者との兼務 | 可 |
帳簿類の管理義務 | 所有者等にある |
変更届 | 技術者変更から1ヶ月以内に届け出 |
健康被害発生時 | 管理怠慢により罰則の可能性あり |
建築物環境衛生管理技術者免状に関する事項
項目 | 内容 |
交付者 | 厚生労働大臣(都道府県知事ではない) |
交付対象 | 試験合格者のみ |
返納命令後の再交付 | 金刑は2年、その他は1年経過必要 |
記載事項変更 | 厚労大臣に書換え申請 |
紛失・汚損 | 再交付申請可 |
紛失後発見時の返還期限 | 7日以内 |
死亡時の返還 | 届出義務者が3ヶ月以内に返還 |
返納命令違反 | 罰則なし |
管理技術者未選任時 | 所有者等に30万円以下の罰金 |
試験に出る!登録対象外
×建築物空気調和設備管理業
×建築物飲料水給水管清掃業
登録対象業種と必要資格
登録業種 | 必要資格 |
建築物清掃業 | 清掃作業監督者 |
空気環境測定業 | 空気環境測定実施者 |
建築物空気調和用ダクト清掃業 | ダクト清掃作業監督者 |
建築物飲料水水質検査業 | 水質検査実施者 |
建築物飲料水貯水槽清掃業 | 貯水槽清掃作業監督者 |
建築物排水管清掃業 | 排水管清掃作業監督者 |
建築物ねずみ・昆虫等防除業 | 防除作業監督者 |
建築物環境衛生総合管理業 | 統括管理者+清掃作業監督者+空気環境測定実施者+空調給排水管理監督者 |
事業登録の必要要件
● 人的要件
・各業種ごとに、該当する管理技術者の免状保持者が必要
● 物的要件(一部例)
業種 | 必要な設備例 |
空気環境測定業 | 炭酸ガス検定器、風速計 |
ダクト清掃業 | 集じん機、真空掃除機 |
飲料水水質検査業 | pH計、全有機炭素定量装置 |
排水管清掃業 | 高圧ホース、洗浄ノズル |
ねずみ・昆虫防除業 | 防毒マスク、消火器 |
清掃業 | 床みがき機、真空掃除機 |
貯水槽清掃業 | 残留塩素測定器 |
事業登録の注意点
・登録申請先:都道府県知事(市町村長ではない)
・建築物衛生法施行後に導入された制度
・登録は「営業所ごと」に行う(本社が一括申請は不可)
・登録の有効期間は6年間(←誤:5年間)
・登録がなくても維持管理業務はできるが、「登録表示」は不可
・都道府県が条例で独自に登録基準を定めることはできない
・アルバイト・パートも従事者研修の対象
・一斉研修が難しい場合は、分割実施も可
・登録事項に変更・廃止があれば30日以内に届け出
・従事者研修の「方法変更」の届け出は不要
登録事業監督者の兼務NG例
・同一者が2つ以上の営業所で監督者を兼務
・同一営業所で2つ以上の登録事業の監督者を兼務
厚生労働大臣の権限・指定団体
・全国的に業務を行う団体を厚労大臣が指定できる
・指定団体の業務:業務に必要な研修、福利厚生施設の提供
・団体は受託料金の統一を指導してはならない
・団体は改善命令を出せない
その他の登録制度
・登録は「事業者の資質向上」が目的
・登録を受けていない場合、「登録の表示」や「類似の表示」は禁止
・登録を受けていないと、「環境衛生上の維持管理業務」は行えない
・登録基準に財務要件はない
・登録に必要なのは物的+人的要件(両方必要)
・登録基準に適合しなくなった営業所は、登録取り消しの可能性あり
・免状で監督者となった者は、6年ごとに再講習が必要
・ダクト清掃業には、専用の保管庫が必要
・登録基準に事故時の補償要件は含まれない
特定建築物の立入検査
・住居部分への立入は、承諾が必要(対象外)
・立入権限は:都道府県知事、保健所設置市の市長、特別区の区長
・検査は:事前通知・抜き打ち、どちらも可能
・検査人数に制限なし
・立入職員は「環境衛生監視員」
・身分証明書の携帯が義務
・対象は「特定建築物のみ」
・犯罪捜査目的での立入は不可
都道府県知事の権限(市長・区長に委任可)
付与されている権限 | 付与されていない権限 |
特定建築物への立入検査 | 登録営業所への立入検査 |
特定建築物への改善命令 | — |
届出の受理 | — |
所有者等への報告徴収 | — |
公共建築物と一般特定建築物の違い
項目 | 一般の特定建築物 | 公共建築物 |
立入検査 | 可 | 書類提出で代替 |
改善命令 | 可 | 勧告にとどまる |
通知先 | 所有者等 | 機関の長 等 |
試験によく出る罰則
【10万円以下の過料】
・免状返納命令違反
・登録せずに事業表示した者
【30万円以下の過料(所有者等に対して)】
・技術者未選任
・帳簿備付け違反
・届出義務違反
・改善命令に従わなかった者
※技術者本人は処罰対象にならない点に注意
「届け出だけではNG」な法律(許可が必要)
区分 | 法律名 | 備考 |
許可制 | 興行場法 | 都道府県知事の許可 |
許可制 | 旅館業法 | 都道府県知事の許可 |
許可制 | 公衆浴場法 | 都道府県知事の許可 |
「届け出制」の法律
・理容師法
・美容師法
・クリーニング業法
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