建築物環境衛生管理技術者試験ノート【ねずみ、昆虫等の防除】

カ類(蚊)

種類別まとめ(表)

種類生息地域発生場所媒介する疾病特徴
チカイエカ九州~北海道浄化槽昼夜吸血、アカイエカに似る、無吸血産卵可、冬季休眠しない
アカイエカ九州~北海道下水溝・雨水ます夜間吸血、1.2m以上移動可能
ヒトスジシマカ南西諸島~東北人工容器・雨水ますジカウイルス、デング熱、チクングニア熱昼間吸血、吸血源多様、150m移動、冬季は卵で越冬
コガタアカイエカ北海道少ない水田・湿地日本脳炎数十km移動可能
シナハマダラカ九州~北海道水田・湿地マラリア

※ ウエストナイル熱もカ類が媒介する。

ゴキブリ類

特徴(全般)

変態:不完全変態(幼虫→成虫)
生活習性:夜行性、雑食性、集合フェロモンを持つ
屋外生活:可(例:クロゴキブリ)
生息環境:暖房のあるビルでは通年生息可能

主な種類と特徴

チャバネゴキブリ
 卵鞘を固着せず、ふ化まで身体に保持
 毒餌への喫食抵抗性ありとの報告あり
 通年活動(休眠性なし)
 一生で5回産卵

クロゴキブリ/ワモンゴキブリ/ヤマトゴキブリ
 屋外生活も可能

処理方法と薬剤(表)

処理方法内容・特徴
残留処理通路などに薬剤散布。薬剤:有機リン系(追い出し効果なし)、ピレスロイド系(あり)
空間処理ULV処理(部屋全体に散布、速効性あり・残効性なし)
毒餌処理経口摂取タイプ:ホウ酸、ヒドラメチルノン、フィプロニルなど

用語・ポイント

ローチスポット:ゴキブリの活動場所にできる排泄物等の汚れ
ゴキブリ指数
 =全補機数+トラップ数+日数
 →1日1トラップあたりの捕獲数で評価

ダニ類

種類寄生先/特徴媒介感染症
イエダニネズミ類に寄生/吸血性
ツメダニ他のダニやチャタテムシを捕食/ヒトを吸血しない
ヒゼンダニヒトの皮膚に寄生/吸血しない疥癬(かいせん)
マダニペット(犬など)に寄生/全成長段階で吸血SFTS、日本紅斑熱、ライム病
トリサシダニ・ワクモ野鳥に寄生/吸血性
コナダニ25°C、湿度60%以上で発生/保存食品・畳
カベアナタカラダニ建物の外壁に出現/ヒトへの加害なし
ヒョウヒダニアレルゲン/殺虫剤に抵抗性/環境対策が基本気管支喘息

ハエ類

種類発生源・特徴媒介感染症/備考
イエバエ鶏舎・ゴミ処理場/ピレスロイド剤に抵抗性O-157
ニクバエ卵ではなく幼虫を産む
クロバエ気温の低い時期に出現/大型
キンバエハエ症の原因
ノミバエ類走光性/スカムから発生/素早く歩く
ショウジョウバエ腐敗した果物・植物から発生
チョウバエ類汚水・浄化槽表面・下水などから発生
ニセケバエ類植物肥料(油かすなど)から発生

ネズミ類(生態・特徴)

種類活動地・特徴食性容姿など
クマネズミ都心ビル/高い連係能力/壁も登る植物性強い尾長い(体長より長)/耳大きい
ドブネズミ地下・低層階・水辺/泳ぎ得意/臆病動物性好む尾短め/耳小さい
ハツカネズミ港湾・農村・ビル内/行動範囲狭い種子食性小形/耳大きい/特有の臭い

● 媒介感染症:レプトスピラ症、ペスト、ラッサ熱 など
● 防除の基本(IPM):
 ① 餌を断つ
 ② 殺鼠剤を適切に使用
 ③ 通路を遮断(侵入防止)

ラットサイン:足跡、かじり跡、糞尿などの痕跡
ラブサイン:体の脂・汚れによる壁や配管のこすり跡

調査頻度
 ・食品取扱区域:2ヶ月以内ごと
 ・それ以外の区域:6ヶ月以内ごと

その他衛生害虫

種類特徴・媒介感染症など
トコジラミカメムシ近縁種/夜間吸血/幼虫・成虫とも吸血
コロモジラミ・アタマジラミ吸血後の強い痒み/下着や頭髪に寄生/発疹チフス・シラミ症
カツオブシムシ類幼虫が加害/フェロモントラップが有効
タバコシバンムシ保存食品などを加害
ヒメマルカツオブシムシ幼虫が加害
スズメバチアナフィラキシーショックの危険/特定外来生物
シバンムシアリガタバチシバンムシの老齢幼虫に外部寄生
ネコノミ成虫のみ吸血/空腹に強い

殺虫剤の分類と特徴(一覧表)

分類代表薬剤特徴・備考
有機リン剤ジクロルボス急性毒性高/速効性高・残効性なし/脂蒸散剤(チョウバエ類に有効)

フェニトロチオン対称型/マイクロカプセル(MC)剤あり

プロペタンホス非対称型/MC剤あり
ピレスロイド剤メトフルトリン常温揮散でも効力あり/ノックダウン後に蘇生あり/除虫菊類似/忌避効果なし

フェノトリン、ベルメトリン、エトフェンプロックス、フタルスリン炭酸ガス製剤あり
昆虫成長制御剤(IGR)ピリプロキシフェン幼若ホルモン様/羽化阻害

ジフルベンズロン脱皮阻害
カーバメート剤プロポクスル国内で唯一認可
食毒剤ホウ酸、ヒドラメチルノン経口毒性/遅効性中心
温差剤(虫よけ)イカジリン、ディート忌避目的(効果は限定的)

殺鼠剤の分類と特徴

分類代表成分特徴・備考
抗凝血性(第1世代)クマテトラリル、フマリン、ワルファリン反復摂取が必要/選択性あり
抗凝血性(第2世代)ジフェチアロール、ブロマジオロン少量単回でも致死効果/特定建築物内使用不可
急性殺鼠剤リン化亜鉛など急性毒性/即効性ありだが忌避性もある
忌避剤カプサイシン、シクロヘキシイミド追い出し目的/殺鼠効果なし

殺虫・殺鼠剤の毒性評価指標

指標意味
LD50半数致死量(少ないほど毒性が強い)
LC50半数致死濃度
IC50半数阻害濃度
KT5050%ノックダウン時間
NOAEL無毒性量(長期連続投与で毒性が出ない量)
ADI一日摂取許容量(ヒトに安全な摂取上限)

殺虫剤の使用に関する注意

・速効性のある薬剤=残効性に欠ける傾向あり
・同じ薬剤を繰り返し使うと、抵抗性が発達する
薬剤抵抗性は免疫ではなく自然選択によるもの(環境適応)
・薬剤切り替えが重要。単に高濃度で複数回使うのは×
・殺虫剤の多くは劇薬に該当
・ピレスロイド剤は、忌避効果はない
・除虫菊の成分類似 → ピレスロイド系
・〇〇ホス=有機リン系、〇〇リン=ピレスロイド系(語呂合わせで覚える)

防除機器・手法(粒径順)

機器種別用途・特徴
煙霧機(油性)煙状/粒径大/速効性/密閉空間で使用
噴霧器一般的/粒径中
ミスト機蚊・チョウバエ成虫に使用/排水槽など
ULV機(超低容量)粒径小/乳剤/低濃度・多量散布/速効性高
手動散粉機隙間・割れ目に対応
粘着トラップ類ハエ・ダニ・ゴキブリの調査/ローチスポットの目安

防除構造・IPMの要点

・通風口・換気口の金属格子幅は1cm以下
・1階窓の下端は地面から90cm以上
網戸は16メッシュ以上が侵入防止に有効
IPM=総合的有害生物管理
 →「予防重視」「生息密度調査」「目標水準設定」「段階的作業」

水準内容
許容水準良好な状態。定期調査継続
警戒水準今後問題が起こる可能性あり
措置水準即時対応・防除作業が必要

その他よく問われるポイント

ULV処理:速効性高いが残効性なし/煙感知器に誤作動注意
同じ薬剤を繰り返し使用しないことが抵抗性防止の基本
医薬品・医薬部外品として承認されている薬剤のみ使用可能
殺虫剤散布3日前までに通知、散布後も掲示必要
毒餌は周辺にエサがあると効果が落ちる/並べて設置が望ましい
薬剤散布後に虫が減らなければ薬剤変更を検討

■ IPM(総合的有害生物管理)

IPMとは?
 →「Integrated Pest Management(総合的有害生物管理)」
 → 発生予防を重視し、薬剤以外の方法も活用する防除手法

基本方針
 ・生息密度調査
 ・防除目標の設定
 ・防除手法の選定(環境改善、物理的防除など)

 ・評価と記録

誤りに注意:「IPMでは薬剤を使わない」→×
 →必要に応じて薬剤も使用するが最終手段として位置付ける

● IPMにおける水準の定義

水準内容
許容水準環境衛生上良好。定期調査継続でOK
警戒水準放置すると悪化の恐れ。予防的対応が望ましい
措置水準即時に防除作業が必要なレベル。計画的・段階的に対策を講じる

・許容水準の場合 → 原則6ヶ月に1回以上の調査(多発地点は2ヶ月に1回)

ペストコントロール

pest(ペスト)=有害生物(ネズミ・虫など)
・2つの側面がある:

種類内容
ベクターコントロール感染症を媒介する衛生害虫の防除
ニューサンスコントロール不快感を与える害虫の防除(例:ハエなど)

防虫・防鼠構造(建築的対策)

対策内容基準値・注意
網戸の網目16メッシュ以上
金属格子の目の幅1cm以下
1階の窓の下端と地表の距離90cm以上
電撃殺虫機の設置位置窓・出入口から離して設置
ライトトラップ短波長誘引ランプで害虫を捕獲する器具
昆虫誘引性比較自色蛍光灯>高圧ナトリウム灯

殺虫剤の毒性・効果の評価指標

指標意味
LD50半数致死量(低いほど毒性が強い)
LC50半数致死濃度(液体や気体の濃度で表す)
IC5050%阻害濃度(成虫化を阻害など)
KT50ノックダウンまでの時間(50%が倒れるまでの時間)
NOAEL毒性が認められない最大投与量(長期連続投与)
ADI一日摂取許容量(毎日摂取しても影響が出ない薬量)

正誤対策

・「殺虫剤は医薬品または医薬部外品として承認されたものを使用」
・「殺虫剤散布は3日前までに通知、掲示も必要」
・「殺虫剤の効果がない場合は他の薬剤に切り替える
・「同じ薬剤を高濃度で複数回使うのは×:抵抗性が発達するため」
・薬剤抵抗性は免疫ではなく、淘汰(環境適応)によって生じる

用語

用語意味
選択毒性害虫には強く作用し、人間や哺乳類には影響が少ない性質
薬剤抵抗性殺虫剤への耐性が数世代にわたり遺伝する現象
水性乳剤希釈しても乳化しない。環境負荷が低い

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